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- 房総ソルトゲーム迷走伝 -

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Dr.Kの多趣味でGo!

リストマーク魚の鮮度保持と食べ頃

「白身は寝かせた方が美味い」、「〆た魚は新鮮だ」など、様々な声が聞こえてくる。また魚はどうやって持ち帰るべきか。Dr.Kなりに多くの文献を調べてみたが、微妙に表現が違っていたりする。ここでは、それら文献から共通するものをまとめ、整理してみた。

リストマーク魚の旨味成分

グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸の三大旨味成分。グルタミン酸はアミノ酸系で、イノシン酸とグアニル酸は核酸系だ。このアミノ酸系と核酸系が混在すると旨味が増す「旨味の相乗効果」と言われる。

実は、魚の旨味にはグルタミン酸とイノシン酸が含まれる。しかし、グルタミン酸は最初から身に含まれているが、イノシン酸はそうではない。イノシン酸は、魚の筋肉中に含まれるエネルギー源ATP(アデノシン三リン酸)が、死後、時間の経過とともに分解され、生成されるのだ。

つまり、イノシン酸はATPの量に影響される。また、イノシン酸の生成は魚の保存条件によって変わる。

エネルギー源であるATPは運動やストレスなどで減ってしまう。ATPの量を減らさないためには、できるだけ魚を苦しめないこと。釣り上げるまでの長時間のやり取りや、釣り上げた後の放置はATPに影響する。

リストマークATPからイノシン酸へ
  目に見えるのは死後硬直

筋細胞によるATPの消費・分解が進み、ATPが枯渇すると死後硬直が始まる。そして、ATP→ADP→アデニル酸→イノシン酸へと変化しつつ、死後硬直も進む。

イノシン酸の生成が終わる頃、完全硬直を迎える。イノシン酸への分解は比較的早く進むが、イノシン酸自体の分解は緩やかで体内に蓄積される。その後、イノシン酸の分解が本格的になると、解硬(硬直が解けて)から腐敗へと向かう。

死後硬直が始まるまでの時間や持続時間は魚の種類や大きさによって異なる。ATPの量は魚体の大きさに比例するため、小さい魚は死後硬直が早く始まり、持続時間も短い。また、赤身魚は死後硬直や腐敗が速いと言われる。

解硬までを遅らすことができれば長く鮮度を保て、イノシン酸を増やせれば魚の旨味を多く楽しむことができる。

リストマーク「赤身」と「白身」のまめ知識

持久力が持ち味の赤身魚は、ATPを主に呼吸(酸素との化学反応)から作りだす。マラソン選手と同じで筋肉は有酸素運動をしている。

逆に瞬発力勝負の白身魚は、ここぞという時は解糖という能力でATPを作り出す。ATPの再生回路も持っている。解糖は無酸素状態でも問題ないが、一瞬の筋強力を発揮した後は乳酸が溜まる。リフティングや短距離選手と同じだ。

マグロやカツオの他、ブリ類、サバ、アジなどの青物は赤身魚である。タイ、ヒラメ、スズキに、メバルやカサゴなどのロックフィッシュは白身魚だ。ちなみに鮭も白身魚である。見た目で分類するには、身の色よりも血合いの量に注目した方がよい。

走り回る赤身魚に、突進力の白身魚。釣趣も異なるのだ。

釣師    シーバス

リストマーク死後硬直を遅らせろ ~旨味の増大と鮮度保持~

ATPの消費を抑えるとともに、分解を遅らせるために「活け締め」を行う。活け締めとは、

①活け越し
生簀で魚を休ませ、消費したATPの回復を待つ。
②即殺
ピック刺し等により、脳と延髄破壊で脳死状態を作り、脊髄との連携を絶つ。苦悶死、窒息死を回避する。
③脱血
心臓が動いているうちに、鰓膜と脊髄に沿う血管をナイフで裁ち、海水中で血を抜く。なお、②③を同時に行う脊髄破断もあるが、④で頭を落とす必要がある。④を行わない場合は、脊髄破断の方が簡単。
④神経抜き
針金などを脊髄に通し、筋肉と繋ながる脊髄の神経を完全死させ、筋肉の活動(ATPの消費)を抑える。
⑤冷却
死亡時の体温上昇を抑制。0℃で数分程度。
⑥保冷
完全硬直までは5~10℃で保冷。

参考映像はこちら(youtube)

なお、⑥の保冷で0℃保存してしまうと、冷却収縮によりATPの分解が活性化され、活け締めの遅延効果を上回ってしまう。逆に10℃以上だと臭いや腐敗の影響が出やすくなる。要は、完全硬直までの間は冷やし過ぎないようにすることだ。ただ、細菌のことを考えれば冷やすに越したことはないのだが。

完全硬直後は、0℃の氷温室で保管する。体表の雑菌の繁殖が抑えられるとともに、筋肉中の酵素が不活化することで、解硬までの時間を延ばすことができる。

活け締めの効果図表

リストマーク陸っぱりアングラーの鮮度保持

活け締めの6つの工程だが、①の活け越しは普通のアングラーでは無理。また、④の神経締めは手間がかかるので、時と場合によるのだろう。しかし、ある程度の大きさの魚が釣れた時、即殺・脱血の②③は外せない。血液は身肉の褐変や臭気の発生、肉質軟化などの原因になるため、脱血処理は必須だ。

一方、小型のイワシ、アジなどが大量に釣れてくる場合は、水氷締めで手返しを重視。キンキンに冷えた水氷締めのままの保冷だと0℃近くになってしまうが、小さい魚はそもそもATPの量が少ない。分解を遅らせる効果はさほどではない。

それでも時間に余裕がある時は、脊髄破断による即殺・脱血をやろう。脱血により臭気は随分と変わるものだ。

そして、持ち帰るためのクーラーボックスでは直接氷を魚に当てないこと。氷焼けしてしまう。魚を新聞紙等で包み、袋に入れた氷を添えるのが一般的。

クーラー Dr.Kは、冷気は上から下に流れることを利用し、氷を上部に配置できるようにした。しかし、外気が20℃を超えてくると10℃以下にならないので、氷を増やすか、氷水を使う。夏場の氷水は水の量により5~10℃。氷水で魚を包む。もちろんその時は魚を袋に入れる。特にイカは水に触れないよう細心の注意を。

なお、青物に限っては、水分を含みにくいため、直接氷水の中で持ち帰ってもよいが、保存温度を踏まえ、季節に応じて選択するのがよいだろう。直接投入する氷水は、塩分濃度を調整した(海水3に真水1程度の)水を使い、凍らせたペットボトル等で濃度が変わらないように冷やしたものである。

リストマーク食べ頃

ここまで、旨味の増やし方や鮮度保持について書いてきたが、魚の旨さの感じ方は人それぞれ。

  1. 1 身に美しい透明感があり、プリプリとした強い食感が好み。
    (ATPが多く、身質が最も硬い時期。死後硬直が初期まで。)
  2. 2 食感と旨味を兼ね備えた状態が好み。
    (残存するATPによる食感と、ATPの分解によって生成されたイノシン酸の旨味が混在する時期。死後硬直の途中。)
  3. 3 増加した旨味そのものが好み。
    (プリプリ感はほとんどなくなりながらも、身質はきちんと締まり、旨味が最も強くなった状態。完全硬直直後。)

旨さには食感や見た目の旨さもある。これらの旨さはまさに好みで、どの状態で食すかは、魚種、料理によっても違うだろう。問題はこれらの状態をどう判断するかだ。サバなどはいち早く硬化し、解硬も早いが、タイ、ヒラメなどはかなり遅い。

誤解を恐れずに、活け締めした魚の中間値、一例として言えば、締め後硬直開始は2時間、完全硬直を迎えるのは24時間前後、完全硬直終了が42時間といったところか。

ほぼ完全硬直の魚体
頭と内臓は除去済み
完全硬直

完全硬直の状態は、魚の頭の方を持って横にしても、体がピンと横になっていることだ。完全硬直の後でダラリとしてしまっては、既に硬直は解けている。Dr.Kの家族は1に近い2が好みなので、早く食す分には問題がない。概ね24時間のうちに食してしまう。

リストマークおまけ

魚の鮮度保持や旨味(イノシン酸)について書いてきた。しかし、旨味はこれだけではない。

グルタミン酸を増やす方法もある。寝かせている間にイノシン酸を増やしつつ、グルタミン酸を加える昆布締めだ。白身魚では是非お試しを。

しめ鯖などの酢〆は、有機酸系の旨味である酢酸とのコラボ。有機酸系では、ほかに貝の旨味のコハク酸が有名だ。

なお、貝やイカ、タコのATPはイノシン酸にはならない。イカの旨味はイノシン酸前のアデニル酸とグルタミン酸の相乗効果。食感が失われる前の新鮮なうちに食べた方が旨い。イカ、タコのほんのりとした甘さはタウリンから感じられるものだ。

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